彼氏キケン地帯
「蜜希じゃん。なに?」
「なに?じゃないよ。話しある。屋上行こ」
事故が起きた、あの階段をのぼる。
確かめたいの。
ホントに、尚が尚なのか。
「いーよ。じゃあ行くか」
階段をのぼるにつれて不安が高まる。
尚が変わっちゃったのは、もしかしたらぐれちゃったのかもしれない。
何か嫌なことでもあって、きっと不良みたいになってるんだ。
尚、お願い。
また、いつもの尚の笑顔が見たいよ。
「話しって何?」
「尚、なんで変わっちゃったの?」
「ん?」
話の内容を理解していないのか、尚はフェンスに寄り掛かったまま首を傾げる。
「前まで、ピアスなんて付けてなかったし、香水だってしなかったのに…尚が、尚じゃないみたいだよ」
思わず涙が溜まり、視界がぼやけてくる。
今、尚がどんな顔をしているかわからない。
「…なーんだ。ばれたか」
「…は?」
しばらくして、口を開いたのは尚。
『ばれた』?
なにが?
「実はさ、俺…
尚じゃないんだよね」
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