彼氏キケン地帯



話し終わると、香奈は複雑そうに顔を歪めると、困ったようにあたしを見つめた。



「…尚くんにそのこと話してみるとか…」


「無理だよ…以前ならきっと信じてくれたかもしれないけど、あたし勝手に尚の写真見ちゃったし…信頼失っちゃったもん。」


「で、でもっ」


「それに!…もしかしたら、尚は他に好きな人できたかもしんない…あの写真見たときね、尚はすごく怒ってたんだぁ…」

「蜜希…」


「でも、写真の中の尚はすごく笑ってた…っ」



尚の一番があたしじゃないと思うと、胸がズキンと痛んで苦しくなる。


きっと、今日尚があたしに話したいことはよくない話かもしれない。


だって、あたしなんかが尚の彼女でいること自体が不思議なことだもん。


尚に釣り合わないのに…
尚のために何かできるわけでもないのに…


当たり前のように、尚の隣で笑えていたのは奇跡みたいなもので…


それが、ずっと不安だった。


尚のことを好きだと言う子はあたし以外にたくさんいるし、あたしより可愛い子なんて山ほどいる。


それなのに、尚はいつもあたしを優先してくれていて、嬉しいのに半分複雑だった。


わからない。


尚がわからない。



いつか、愛想つかされるって思ってた不安が…今現実になってしまっただなんて、信じたくないよ。




「蜜希…行くの?」



香奈が泣きそうな顔をする。



「うん…」




あの写真を見られたら、間違いなくあたしと尚の関係はなくなっちゃう。


今度こそ、確実に嫌われる…


そんなの嫌だよ…。



あたしは、尚を失いたくない。


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