彼氏キケン地帯
もう一度、尚は髪の毛をくしゃぁっとすると、伏せ目がちに顔を上げる。
そして、ようやく尚の顔が見れてあたしは少しほっとする。
次に何を言うんだろうと尚を見つめるあたしをチラリと見ると、尚は前髪をかき揚げて少し照れくさそうに言った。
「つーかお前さー…俺が浮気したーとか思ってんだろ。」
「え?!…うん。」
図星をつかれ、あたしは戸惑いながらも正直に頷いた。
「もう一度…見るか?」
「うん。」
ぐしゃぐしゃになった写真を、乱暴にポケットから取り出しあたしに渡す。
「隣にいんの、お前だから。」
「えっ」
そう言われて、急いで写真を見る。
「自分の着た服くらい、覚えてろよ。」
目の前には、唇を突き出す可愛い尚。
写真には、あたしの隣でこんなに笑ってたんだと思える笑顔の尚。
隣には、少し照れ笑いのあたし。
背景は、あの時行ったテーマパーク。
楽しい雰囲気。
そして、あたしの隣に
長い髪のお姉さん。
白い服着て、シンプルだなぁ。
「…え。」
仲良さげに、あたしの肩に手をおく知らない女の人がいた。
長い髪のせいで顔は見えない。
でも、どこか笑っているようで不気味。
それを見て、サーっと血の気が引く。
なんだか、目の前が真っ暗じゃん。
誰か、この悪夢から助けてください。
「この写真さぁ、どこのお寺に持って行こうか悩んだんだけどー…って蜜希?!ええ?!」
気を失って泡を吹くあたしに驚く尚。
こんなんなら、見なきゃよかった。
結局、こんな結末かよ…
尚の腕に抱かれながら、あたしは白眼を剥いて笑った。
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