彼氏キケン地帯
ぎゅっと拳を握ると、壁にもたれて座り込んでいる斎藤の方を向く。
その顔は、所々痣ができていて腫れている。
口元は切れていて、その血を拭うと、ゆっくりとあたしを見上げた。
「気持ちかったら、いいじゃんねぇ?」
「てめ…っ」
「尚!ダメ。」
いつものおふざけ口調にふざけた言葉。
もちろん、尚は今にも殴りそうだったけれど、あたしはそれができなかった。
本当は一発殴ってやろうと思った。
なのに、その瞳は、なぜか切なげで今にも壊れてしまいそうで。
「あんた、やっぱ最低だよ。」
「…知ってるって。」
「でも…あんたの顔、泣きそうに見えるんだけど。」
_