彼氏キケン地帯
その後、もちろん尚は職員室で長々とお説教をくらった。
あれだけ派手に殴り合ったのにお説教で済んだのは、斉藤が間に入ったおかげらしい。
でも、その代わり斉藤は一週間の謹慎処分。
きっと、あたしにしたことを自分から言ったのだと思う。
少しだけ静かになった学校。
そう思うのは、あたしだけだろうか。
ちらりと隣で悠長に飴を舐めている尚を見ていたら、なぜかふと笑みが零れた。
あたしのために全力で怒ってくれた彼が愛しい。
あの時は少し怖かったのに、なぜか今はすごく彼を抱きしめたくなった。
「あ?」
あたしの視線に気がついた尚は、少しだるそうにそう言うとチュッと優しくキスをした。
この甘い痺れが心地いい。
唇が離れると、ニコッとあのラブリースマイル。
久々の可愛らしい笑顔に、あたしの心臓は破裂寸前。
「蜜希、家泊まってかない?」
「っっ尚くん…っ!」
先ほどまで荒々しく喧嘩をしていたとは思えないようなキラキラの可愛らしい笑顔。
「“尚くん”とか懐かしいね。ね?“蜜希ちゃん”」
「と、泊まってきますっっ」
これは猫かぶりだとわかっていても、あたしは素直にときめき、そしてイエスの一つ返事。
泊まりがどういう意味をさすかなんて、可愛らしい笑顔を前にして、考えられる余裕なんてなかった。
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