彼氏キケン地帯
同じく疲れたような顔をしたかながポテチを食べながら言った。
「違うがな。…飛ぶがな。」
かなが食べたポテチのかすを机から払いながら口をとがらすあたし。
「だって、教室でも廊下でも転校生の話だよ?一週間以上も同じ話題になんでこんなに盛り上がるんだか。」
「いやいや、だってあの登場は誰だって印象的…というより変だと思うでしょ。」
「たしかにキャラ濃かったかも…」
あの日はいつもより遅れて担任が教室に入ってきた。
いわゆる体育会系で、遅刻なんて珍しい。
クラス中期待の目で彼を見る。
主に女子。
…もちろんあたしも。
転校生がくるという噂が広まっていることも、この視線にも気づいている担任は、一つ咳払いをして言った。
「……うちのクラスだ。」
キャアアァッ!!
廊下にまで黄色い声が響いただろう。
たぶん他のクラスも、うちのクラスに転校生がきたとわかったはず。
耳を押さえていた担任は、渋い顔をして「転校生。入ってこい。」と一言。
途端にシン…と静かになる教室。
みんなの視線は同じ。
じーっと、転校生がドアを開けるのを待っていた。
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