彼氏キケン地帯
くりっくりのお目めに、長いまつげ。
彼が転校してきてから、先輩たちはよくうちのクラスを覗いている。
「可愛いもんね、彼。」
香奈が目を細めて、神崎くんをまじまじと見る。
「ちょ、睨まないでよ。」
目つきの悪い彼女を指摘すると、顔を崩して「目が悪いだけですが。生まれつきですが。」と悪態をついてきた。
それに負けじと顔を歪めていると、「相川さーん」と上から声が。
見上げると、輝く天使の笑顔。
は、は、はじめて名前を呼ばれた…っ!
感動と少しの緊張で、自分が今どんな顔をしているかわからない。
うわぁ…
下から見るとよけいまつげの長さが際立つなぁ。
ちらりと彼の顔を盗み見ると、目があってふにゃぁっと笑う彼。
思わず、また下を向いてしまい、もごもごと口を動かした。
「な、なんでしょう。」
「本借りたいんだけど、図書室の場所と借り方教えてほしいんだぁ。」
「ほっ本ですか?!ほんまですか?!」
「ちょっと、いい加減な関西弁やめてよね。」
可愛い神崎くんに初めて話しかけられ、しかも頼られているこの状態に軽くパニックを起こしている。
なんで?
なんであたしっ?
果たしてお役にたてるのだろうか。
お話してもよろしいんでしょうか。
「相川さんは図書委員だからって先生が。」
明らかにパニクっていたあたしに、彼は少し困ったように笑った。
「あ、はは…任してください。」
今度は恥ずかしくて顔を上げられなかった。
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