彼氏キケン地帯
前は、いつも穏やかでおっとりしていた尚にドキドキしてたのに、今じゃこんなにひねくれてる尚に夢中だなんて、ちょっと前のあたしには想像もつかなかっただろうな。
不真面目で全然硬派じゃない尚があんなに嫌だったのに、今じゃそんな彼を隠さないでほしいだなんて思ってるなんて。
『ちょっ誰だよ!こいつ泣かしたの!女だからって容赦しねえからな。』
『可愛いなお前。』
『俺…幸せ!』
ほんとは、子供っぽくて、不器用だけど優しい尚のことをこんなにも好きになってたなんて。
きゅうと胸が締め付けられるように痛くて、なんだか泣きたくなった。
視界が滲んで、雫がこぼれ落ちそうになったとか、ふわっと尚の香りがしたと思ったら、あたしは彼の腕の中にいた。
彼はあたしの頬に流れる涙に気づくと、それを拭ってくれた。
「何で泣いてんの?俺、なんかした?」
体が離れたら彼の顔が見えた。
泣きそうな顔していた。
「どっち?」
「え…」
気づいたらそう言ってた。
「尚?それとも"尚くん"?」
尚の目は、動揺してるのか揺れていて、そんなこと聞かなくてもわかってた。
「なんで猫なんか被ってんの?ほんとの尚は違うじゃん。教室にまで来て、なんのつもりなの?」
「それは…」
「ほかに好きな子でもできた?」
「なっ?!ちげぇよ馬鹿!なんでそうなるんだよ?!」
「だって!あたしの時はそういう理由で…っ!」
「だからなんでそれがお前じゃなくてほかの奴になんだよ!」
「あ…っ」
強く抱きしめられた。
痛いくらいに。
「お前が…お前が"神崎くん神崎くん"って言うから…お前のタイプだったから…」
_