彼氏キケン地帯



(おお、こんな顔もできるのか。)


にやけて緩んでしまっている口元を隠すために下を向いていると、あたしが照れていると勘違いをしたのか、さっき頬を染めて戸惑った彼は「ばーか」と鼻で笑っている。



「たまには、まぁ、こういうのも…」


顎あたりを触りながら、何やらゴニョゴニョ言っている。



もしかして、意外と積極的に迫られるのに弱い?

そこでハっとする。


そういえば、あの腹黒幼なじみ(名前忘れた)の前では比較的大人しかったような…



不良化してからの尚って、けっこう気が強くて行動力のある子たちから人気あったし…



(呼び出しされたしι)


そう思うと、あたしこれからやばいんじゃない?!





「誰かにとられちゃうかも!!」


「あんた自分は棚にあげてるでしょ。」


「みっちー積極的だよね。」



お世辞にも可愛いとは言えない顔で絶叫、というまでいかないが叫ぶと、佳菜に呆れ顔が目の前にあった。


尚との甘ーいキスのあと、
現在、教室でお昼を食べている。



尚は委員会で一緒にご飯を食べれない。



だから今日は佳菜と最近できたらしい彼氏、エージくんと三人でお昼。



「まあ、肉食系増えてるしね。」



「まぁ、あんたもだからね?」と一言付け加えてウィンナーを口に含む親友。



「なに?ねぇ、なんでそんなにどうでも良さげなの?ねー!」


「うっざいな!一緒にご飯食べてあげてるだけ感謝しなさいよね!」


「えー、酷い。」


目尻に涙が溜まってきたんですけど。


「かにゃんは素直じゃないなー。ホントはみっちーとお昼食べれなくて寂しがってたんだよ?」



長い前髪を垂らしながら、フッと笑うエージくん。



「キメ顔うざい。」


「かにゃん可愛いっ。」


「しね」




流行りらしいM字バンク。

長い襟足。


いわゆるチャラい、見た目が。



なんで佳菜が付き合ってるのかわからない。


「え、そりゃ失恋して傷心を抱いたかにゃんを優しく抱きしめて…ねっ!」



お茶目な性格は馴染みやすくて、それがたぶん佳菜が彼を好きな理由なんだろう。

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