彼氏キケン地帯
―――……
―……
「蜜希、いる?」
「えっ。い、いますっ」
色素の薄いミルクティー色の髪の彼に話しかけられた彼女は、頬を赤らめて「きゃっきゃっ」とはしゃぐ。
そんな姿を目にしながら、教室のドアのところに手をやり、周りを見渡す。
彼の耳には黒のピアス。
程よい長さの髪の間から、ちらちらと見える。
第三ボタンあたりで緩く縛られている青色のチェック柄ネクタイ。
女の子に、優しく微笑みかける彼。
気品溢れている優しい物腰は、未だに残っている気もするが、全然違う。
「はぁ…」
そんな変わり果てた彼…
あたしの大好きな彼氏。
立花尚の姿を見て、ため息が出てくる。
「相川さん。あのっ、尚くん来てるよ」
さっき尚に話しかけられて頬を染めていた女の子だ。
緩く髪を巻いていて、女の子らしい。
『色気ねーなぁ』
斎藤裕史の言葉が過ぎる。
尚も、あたしのこと『色気ない』とか思ってるのかなぁ…
「ん。ありがと。」
席をたち、荷物をまとめて尚のところまで行く。
にこにこしながら尚は「遅くね?行くぞ」なんてキャラ違うし。
またひとつため息が出た。
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