彼氏キケン地帯


「ん?」


隣で尚がにこっとする。


さっきから聞こえている声は、尚。


懐かしい、柔らかなふわっとした話し方。



「もとに…戻ったの?」

嬉しくなって、自然と頬が上がる。


目を細めて柔らかく微笑む尚。


ポンと優しく頭に尚の手が乗る。

優しく撫でられる。



きゅーん…



嗚呼!久しぶりの胸きゅん!

甘いラブストーリーのヒロインになったみたい!

目の前には、誰もがうっとりするような王子様。

誰もが羨む、彼のお姫様はあたし。



目が合って、ニコッと尚があたしに微笑む。



嗚呼!幸せ!



……チュッ



「へ…?」



唇に感じた柔らかな感触に驚き、ばっと手で口を隠す。



「隙あり」


べっと舌を出して、意地悪そうに笑う男。



「な…ッ」



さっきまでの笑顔とは違う、腹黒い影がひとつ。


「ちょーっと優しくしたらコレだ。なに?“もとに戻った”とか」



ムッとした表情。


「ムカついたから意地悪してみた」なんて悪くべれもなく笑う。




さっきの尚は一体なんだったわけ?




「なに?やっぱり、蜜希は“前の尚くん”がいいわけ?」


「え?」



眉を潜め、罰の悪そうな顔。

視線が絡み、尚は続ける。



「“今の俺”じゃ、だめなわけ?」


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