彼氏キケン地帯
尚は、穏やかで優しくて『お前』なんて言われるのだってはじめてだ。
「…」
つんとした態度。
そんな尚を横目に、あたしはつい何日か前の彼を想う。
『あの子、かわいくない!?』
目が大きくいつも笑顔のせいか、カッコいいっていうより、どちらかと可愛いという言葉がぴったりだった。
入学式のとき、この学校の先輩らしき人たちが騒いでいた。
そうだ。
尚、年上からも人気あったなぁ。
だけど、いつもあたしを優先してくれてたな。
なんだか、大事にされてるって感じた。
尚のことを好きな人は、性格が良かったりおとなしい子だったりするから、自然とあたしに被害はなかったし。
だからか、あまり不安ってなかったんだろうな。
まぁ、尚が硬派すぎたのには困ったけど。
なんて、淀んだ空を見ながら思った。
「…まただ。」
「へっ?!」
隣から声がして、あたしは驚いて尚を見る。
スネた顔だろうな、と推測される。
今までの尚では考えられない。
精神年齢が、見た目より高そうだったのが尚だもん。
今はなんというか。
「俺が隣にいんだから、なにか話せバカ。」
「ば…ッバカ?!」
中1男子か!お前は!
口が悪いけど、やたら絡んでくるわけのわからない奴らっていうのが、あたしの中学一年生の頃の男子のイメージだ。
「お前、ほんとに好きなのかよ」
「へ…」
「蜜希は、ほんとに俺のこと好きなわけ?」
「え?え?」
なんだか人通りの少ない道はずれへと押しやられる。
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