彼氏キケン地帯
「…泣くな。」
リボンを付けてくれると、軽く眉をひそめてそう言った。
「見てるこっちが恥ずかしいから」
鼻の下を軽く擦って、ははっと笑った。
「…っ!!」
は、はにかんだ!!
嬉しくて、あたしは一気に泣き止む。
尚のはにかんだ笑顔を、初めて見たのだから。
いつもの、ひまわりみたいな笑顔もいいけど、この照れくさいのを紛らわせようとするその笑顔にギューッと胸を締め付けられた。
「な、尚っ」
テンションが上がり、ニコニコと尚に話しかけると、尚の不機嫌はいつの間にか直っていた。
「クレープ食べたいっ」
「太んなよ?」
「∑っ…!!」
あたしはわかってなかった。
クレープを食べたくて、尚のことなんてよく見てなかった。
目の前のことでいっぱいいっぱいだった。
尚が、あたしの背中を寂しそうに見ていたことに。
_