彼氏キケン地帯
敵多し恋の迷路
「ない!」
何度探してもない。
ロッカーの中も、鞄の中も懸命に漁ってみるが、どんなに探したって見つからない。
目尻に涙を浮かべて嘆く、一限目の体育の時間のあと。
「まだ見つかんないの?」
心配そうに一緒に探してくれる香奈。
体育が終わってすぐ、更衣室からあたしの制服が消えた。
「誰よ、こんなことしたの!」
香奈が怒るけど、あたしは眉を垂らすだけでなにもできない。
「絶対、これは誰かの仕業だって!!」
初めてのことに、どうすることもできない。
周りはみんな制服なのに、自分だけジャージという孤立感。
胸の奥がモヤモヤしてならない。
誰かが、間違って着て行っちゃっただけだよね。
なんて、自分に言い聞かせていた。
「はは。大丈夫、大丈夫」
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