彼氏キケン地帯
***
「え…」
災いは、幸せのあとすぐに訪れた。
昼休みが終わり、午後の授業が始まる直前だった。
教科書に大きく殴り書きで「別れろ」と書いてあった。
ネームペンとかの油性もんだ。
しかも、よりによって大嫌いな数学の教科書にだ。
消えないし、よけい数学の勉強したくなくなるじゃんか…。
でも、幸せのあとだからか、さっきよりダメージが小さい。
これしきのことで、このあたしが弱音を吐くとでも?
バカたれ。
久しぶりの尚の笑顔だぞ?
あの輝かしい笑顔に、あたしがどれだけキュンしたかわかってない愚かどもめが。
嫌いな数学の教科書の一ページや二ページ、どうってことないわ。
はっ!と笑ってやったけど、めくってみると、十数ページは荒らされていて笑えなくなった。
悔しいけど、簡単にへこたれた。
大丈夫。
尚に会えるから。
帰りは一緒に尚と……
「ええ?!」
「あ?」
_