彼氏キケン地帯
おっと、いけない。
本来の目的を忘れるな、相川蜜希!!!
この雰囲気なら、甘えた言葉一つ言えなくてどうする。
「…寒いね。」
「はぁ…」と、両手に息をかける。
白い息が、もう冬と感じさせる。
これは、いいんじゃないか?!
「俺が温めてやるよ。」
ぎゅっと、尚くんがあたしの手を握り、自分のポケットへといれる。
二人の体温が、尚くんのポケットの中で混じり合う。
「どうしたの?蜜希ちゃん。」
「え?」
「寒いなら、手袋貸そうか?バックの中にたしか入ってたな…。」
妄想でしかなかった。
あたしのいつもの活きすぎた妄想が、現実との境をごちゃごちゃにしてしまったのだ。
わかってましたとも。
尚くんなら、言わないって。
「あった。ハイ、これで寒くないね。」
白い息を吐きながら、尚くんはふんわりと笑いかける。
優しいんだけど、尚くんって鈍いっつーか天然っつーか。
(なんだか、泣きたくなる。)
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