彼氏キケン地帯
「別にいーじゃん。んなこと」
“どうでもいいよ”と言われているみたいで嫌だった。
あたし以外の女の子に呼び捨てされても怒らない尚が嫌だった。
あんな尚を騙したメール。平気なの?
“ふざけんなよ”とか、そんな言葉を期待していたから。
前の尚なら…。
おっとりしてても、どこかちょっと抜け出ても、正義感の強い尚なら…
曲がったことが大嫌いな尚なら、絶対怒ってくれてた。
やっぱり…変わっちゃったんだ…。
物を隠されたり中傷を書かれたりの嫌がらせに、尚を騙してメールをする女の子に。
胸の奥からこみ上げてくる、自分ではコントロールできない感情でおかしくなりそうだ。
むしゃくしゃする。
ムカムカする。
「そんなことより、お前のアド…」
「もういい。」
「…は?」
嫌だ。嫌だ。
こんなの違う。
優しく握ってくれた手は温かくて、あたしの心も同じく温かくなるようなぬくもり。
花のような笑顔に、優しい口調。
「…今の尚は違う。」
「…違うって?」
荒い口調。
つんとした態度。
ぜんぶ違う!
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