彼氏キケン地帯



はぁ…とため息をついて、尚は冷笑を浮かべる。


「蜜希より足を多く見せてるから?化粧が濃いから?髪がボリュームあるから?」


「な…っ!」


「悪いけど、全部ムリ。」


そして不意に優しく尚に頭を撫でられた。


大きな手。


安心する……。



「こんなガキくさい髪型だけど、柔らかくて細いこの猫っ毛。気にってるんだよね。」



スッと、結っていたゴムを二つはずされた。


そして、髪と髪の間に指をスーっと通した。



「…あんたらの、そのクルクルな髪。こんなふうにはいかないでしょ」



クスッと笑うと、尚は立ち上がり彼女たちの方へ歩み寄った。



「はい。君ら、自白してった奴から帰っていいよ?だからさ、早く言っちゃえって。…俺がキレる前にさ。」



尚がそう言うと、たじたじしながら一人一人ぽつりぽりと話し出した。


みんな下を向いていて、尚と目を合わせないようにしている。


肩をときどきビクッとさせながら、恐る恐る口にする。



「き、教科書に落書きしました…」


「…で?」


「ぼ、暴言吐いて、ひ…平手…打ち…しました。」



ダン!


尚が壁に手を強くぶつけ、彼女たちをより怖がらせた。



「帰れ。んで、もう二度とこんなマネすんな。次は、壁じゃなくてお前だかんな」


「ごっごめんなさい!」

「謝れよ。」


「えと…」


「こいつに謝ってから帰れ。」


「ごっごめんなさいっ」



ひとりは出て行き、三人肩を震わせて黙っている。


怯えて小さくなっている彼女たちが、ようやく見えて可哀想になってきた。



「もう、いいよ…?」


「ダメ。ムリ。許さない。お前は黙ってろ。」



最後は、口調がいつもよりも冷たく鋭くて、あたしは口を結ぶしかなかった。



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