彼氏キケン地帯
「…やだ。」
「は?」
「謝らないから!あたしは悪くない!」
そう言って彼女は、屋上を出て行ってしまった。
泣いてた。
尚をずっと想ってた。
その気持ちがあたしにもよく伝わった。
でも、やっぱり彼女は間違ってる…。
尚を見ると、複雑そうな顔をしていた。
そしてチラリとあたしを見た。
ばっちり目が合って、少しびっくりはしたけれど嬉しかった。
たった一日も経っていないのに、尚と話せなかったのは辛かったから。
すごく久しぶりに思えたんだ。
尚は、たしかに冷たかった。
キツい口調に、冷たい瞳だった。
だけど、中途半端な優しさで曖昧な態度で相手を傷つけるより、優しいと思う。
前とは変わってしまったけど、今の尚だって十分優しい。
知ってるよ。
でも、やっぱり心のどこかに引っかかるところがあった。
一体、なんでか、それがなんなのかはわからないのだけれど。
「尚…昨日はごめんね。あと、ありがとう」
「うん…」
それしか言わず、尚はただあたしの隣に座っていた。
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