彼氏キケン地帯
助かった。
助かったけど、なんだかものっすごくムカつくんですけど!
「大丈夫か?奈保おこんじゃね?」
「好きにしていいって言われたんだぜ?俺らの勝手じゃん。」
「それに、アイツの女だろ?ヘタに手ぇ出せねーよ」
そんな会話が聞こえた。
“アイツ”って尚のことだよね?
まただ。
屋上にいたときと同じ。
なにか違和感を感じる。
心の奥になにか引っかかる。
気のせい…?
そう思った時だった。
「ユウシ!」
「おー!近くにいたから、来た」
聞いたことのある声に振り向くと、そこには明るい茶髪。
「斎藤なんとか!」
「裕史デス。」
襟足が長くて、ウザったい髪型。
いかにもチャラ男で、近寄りたくない。
だけど、なんかいつもと話し方微妙に違うような気がするんですけど。
少し驚いたような顔をする斎藤だったけど、すぐいつものようなヘラッとした笑顔で歩み寄ってきた。
「ミーツちゃんっ!こんなヤローばっかのところで、なーにしてんの?」
やっぱり。
なんか違う。
語尾を伸ばした独特の口調じゃないし、少しワルの雰囲気が出てる。
なに
どっちが本当なわけ?
対応のしかたに戸惑うと、耳元に小声で
「早く帰れ。」
そう言った。
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