彼氏キケン地帯
え?と思う前に、タバコの匂いが鼻を掠った。
後ろを見れば、柄の悪い男たちが五、六人に増えていて、みんなしてタバコを噴かしている。
そして、目の前の斎藤を見ると、そいつはいつものへらへら顔じゃなく、どこか真剣な顔をしていた。
あんな顔…するんだ。
みんな誰しも、いろんな表情、顔を持っている。
巻き髪のあの子だってそうだ。
あたしや、さっきの男たち三人の前では、明らかに口調がキツい。
不良ガールだ。
なんか…グレてるって感じ。
なのに、尚の前では女の子って感じだった。
斎藤裕史も、あたしたちの前ではチャランポランだけど、仲間の前では雰囲気が全然違っていた。
そういうもんなの?
じゃあ………あたしは?
あたしは、誰にだって同じようにしてると思うし、いちいちそんなの気にしていないけど…
あたしも、違うのかな?
そう思っていたとき。
「てめぇ、ざけんな!」
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