彼氏キケン地帯
え…
それは昇降口から聞こえた。
泣きじゃくった女の子の声に、聞き慣れた男の子の怒鳴り声。
まさかと思った。
「てめぇ!蜜希になにかあったらただじゃおか…っ」
目が合った。
「あ…」
小さく目を見開き、戸惑った様子の尚。
そして、その隣で泣いているのは巻き髪の女の子。
たしか…ナホって子。
そう思って見ていると、彼女とばっちり目が合い睨まれた。
ひ、怯むかよ。
なんて思いながらも、彼女の目力に正直ビビってた。
いつでも泣ける。
つか、泣いて許してもらおうと思ってる。
その魂胆が気に入らない。
あぁ、なんであたしこの子に同情なんてしてしまったんだろう。
「おまえ、なんもされてねぇ?」
そう言ってあたしの頭に、遠慮がちに優しく手を乗せた尚。
そんなとき、一瞬ものすごく悲しそうな顔をしていたのを見た。
彼女が、あたしに優しくしてくれる尚を見て悲しそうな顔をしていた。
この気持ちは、同情なの?
だって、わかるんだもん。
彼女の気持ちが。
同じ人を好きなんだから。
同じ女の子だから。
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