彼氏キケン地帯



そんな親父は毎日何をしてるか知らないけれど、家に帰ってくるのはごくたまに。



家に帰ってくるなり、香水くせぇ女を連れては俺にこう言う。



「ほら。これで外行ってこい」



親父が俺に渡したのは、数枚の札。



「あら。可愛い子じゃない。息子さん?」


「一応な。」



そんな会話を耳にしながら、俺は黙って家を出る。


そうするしかなくて、抵抗する気もなかった。


なにより虚しかった。


親父の態度にじゃなく、今こんな状況なのに平気になってしまった自分に。


無機質な自分に、虚しさを覚えた。


自分が空っぽなんだと思いたくなかった。




「今から、お前ん家行っていい?」



人肌に触れたかった。



「え…めずらしいじゃん。いいよ」



電話越しに聞こえる、女の嬉しそうな声。



こんなことばかり繰り返してた俺は、やっぱり君のそばにいちゃいけないのかな。



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