彼氏キケン地帯
気付けば昼休み。
尚とゆっくり過ごせる時間の一つだ。
いつも、屋上で一緒にお弁当を食べる。
時々、お弁当交換したりとかして、この時間は好きだ。
さっきまでの不安とか全部飛んでっちゃったりして、楽しい時間。
「蜜希〜。」
今日も、尚が教室にきた。
「食べよ。」
あたしのお弁当より一回り大きい包みを持って、尚は笑った。
そんな尚も、やっぱり可愛くて、小さく幸せを感じる。
屋上でお昼を過ごすのは、やっぱりあたしたちだけじゃなくて、他にもちらほらとカップルがいる。
今日も、その屋上へ向かい、足を進めた。
階段を登る途中、尚が言った。
「蜜希、ごめんな?」
え?
「いきなり、どしたの?」
少し困ったような、それでいて複雑そうな表情。
こんな顔する尚、初めて。
「蜜希のこと、不安にさせてごめん。」
「え?」
「今日、ダチと話しててさ、俺、よく付き合うとかわかんなくって。進展っつーか、なんつーかさ、遅れてるって…。女心わかってないって言われて、初めて気がついた。」
「尚…」
尚なりに考えてくれたんだ。
きっとうまくいく。
あたしたちの未来は、もっと甘くて幸せなんだって思った。
これからもっと仲良くなれるんだって思ってた。
「尚、ありが…」
ガクンと、踏み外した。
あたしは、そのまま後ろへと落ちていく。
その時、スローモーションに思えた。
尚が驚いて振り返っていて、階段も尚も遠く思えた。
一瞬だった。
「っ…き……!」
尚の声がしたと思ったら、ここであたしの意識はプツンと途切れた。
.