彼氏キケン地帯


尚は、ぎゅっと目を瞑ったあと、あたしにすべてを話してくれた。


どんな気持ちで尚が話してくれたのか、それは尚の表情を見てればわかることで、ひとつひとつ噛みしめるように話を聞いていた。



尚はお母さん似で、
片親違いの義兄弟がいること。


今まで、何度も暴力沙汰を起こしていたこと。


女遊びが激しかったこと。

それから、斎藤裕史の彼女と寝てしまったこと。

もちろん、尚からその子に声をかけたわけではなく、向こうからそういうことを誘ってきたみたいだけど、斎藤裕史は誤解してるみたい。


同じ中学だった子は、学校全体で二十人いないぐらいで、同じ学年では五、六人らしいから、
尚が大人しくしていても、たとえキャラが違っていても噂にまではならなかったみたい。



そして、尚が性格を二度変えた理由。


ただしくは、素を出したり隠したりした理由は…



「中学三年とき、お前と出会ったんだよ。」


「ええ?!嘘!?」



驚きの一言。


てっきり、あたしは今年の春頃に委員会が同じになったからかと思ってた。


「え!?なんで!?なんで、それで素隠して、今は出してくれてんの?!」


「…まぁ、お前にはちゃんと、いつか素は出さなきゃなぁって思ってたからさ。」


「で、でもなんであのタイミング?!」


「ま、細かいことはもーイイじゃん。」



そういうと、尚はあたしの両肩に軽く両腕を乗せ、頭の後ろで両手を組まれる。


尚の腕の輪っかに、あたしの顔が囲まれた形になるわけで…



「そろそろ、タノシイことしよーよ。」



にこっと、あの笑み。


保健室で、あたしの髪を撫でながら「サボろ?」なんて言ってたときの、あの表情(かお)!


その色っぽい顔にやられて、頬が一気に紅く染まっているうちに、そのまま尚の重心があたしの方に片寄る。


ギシッと音がし、背中には柔らかな感触。


忘れてた!


ここ、ベッドの上だった!


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