彼氏キケン地帯


時計を見れば、時刻は十時を示している。


待ち合わせは九時半。


少し早いとは思ってたけど、まさかこの状況を予想して…てことじゃないよね?!



「わり、遅れた!」



尚は息を切らしてここに来てくれた。


わざととかじゃないんだってことは、すぐにわかった。



だけど、隣のカップルの声が耳に入ってしまう。


「ごめんね。まった?」

「全然。いいから、行こうぜ。」



あー、憧れる。


その彼氏は、あたしがここにきてから十五分前には来てた。


それだけ待っても、この余裕の姿。


憧れはこんな感じ。



だけど、


「はあはあ…くそっ…」

汗だくになるまで走ってきてくれた尚を見ると、そんな気持ち一気に吹き飛ぶんだ。


いつもは涼しい顔をする尚だけど、余裕のない顔を見せてしまうほど走ってきてくれたと思うと、より愛おしい。



「行こう?」



尚の額に浮かぶ汗をハカンチで拭いてあげると、尚は少し照れたように笑った。


だけど、その姿は嬉しそうにも見えた。



幸せな瞬間って、これを言うのだろうか。



自然と頬が上がるのが自分でもわかった。



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