勝利の女神になりたいのッ!番外編
幼い日、父上の目を盗んでは春牙と遠乗りをした。


遠乗りの途中の大雨に降られて見つけたのがあの洞窟だったんだ。


小さな洞窟で体を寄せ合って暖めあったあの日。


忘れない。


幼い日のあたたかい思い出。




春牙はそこに眠っているのね。


忘れないで春牙。


その洞窟を二人だけの秘密の場所だと決めていたことを...。


二人だけの大切な場所だったあの洞窟を忘れないで...。



そう願っていたけど、あなたはその場所に眠っているんだね。


私もいつか...。


あなたとの約束を果たして天寿をまっとうしたら、あなたの隣に埋めてもらいたい。





「ありがとうございます左近様。」



「お前は生きねばならない、春牙の分も生きて幸せになりなさい。」





幸せなんて望んでなかった。


ただ生き延びること、春牙と約束した生き延びることだけを考えていた。


生き延びることはできた。


その後は?


その後の私は?



春牙、どうしたらいいの?












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