勝利の女神になりたいのッ!番外編


「これで決まりね。」


ペロリと幼子のように舌を出して話す奥方様。



「あの...私見張りなんて...」


できませんという言葉を続けることはできなかった。


「あんなの主人を黙らせるための手段に過ぎないのですよ。」


ニッコリと微笑んで奥方様は口元を袖で隠してからクスクスと笑い声を立てた。



そんな奥方様を不思議そうに見ている私に奥方様はもう一度ニッコリと笑って言ったんだ。



「左近様も男ですからね、私がこんなではお可愛そうです。華を愛でることをとやかく言うつもりはないのですよ。あれは口実です。私はとても左近様に大切にされています、幸せな妻です。朱里ちゃんにもそれはわかってもらえてるかしら?」



「はい、とてもいいご夫婦だと思います。」



「フフ..ありがとう。
そんな朱里ちゃんだから左近様のお側に仕えてもらいたいと思ったんですよ。
朱里ちゃんもきっと左近様を好きになりますよ。
男として、いつか左近様を見る日が来るでしょう。それは春牙さんを忘れるのではなく新たに好きになるのです。左近様も同じです。私のことも好いていてくれています。
そしてきっとこの先朱里ちゃんのことも...。」



「そんな...そんなことありません!!」



「男と女とはそういうものなのですよ。あなた方はきっと何かの縁で結ばれている、そんな気がするのです。
それにあなたは忍。左近様を守ってくださいね。」





それから何も言わない私に奥方様は少し眠るから部屋から出るように言って布団にその細くて小さい体を横にした。


私は困惑したまま自分の部屋に戻ったんだ。









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