勝利の女神になりたいのッ!番外編
俺の出生は俺にもわからない。
「アンタは山の中で死にかけていたのさ。」
ケラケラと笑いながら話すのは俺を拾い育ててくれた朱里。
「こんなに綺麗な若者に成長するなんて、あの時は思わなかったな。」
お前はどこか高貴なお方の不義の子供なんじゃないかとニヤニヤ笑いながら話すのは朱里の仕える島左近様。
殿の次に俺が尊敬する男。
「だから捨てられたんだね、訳ありだねぇ。」
茶化すようにケラケラと笑いながら話す朱里。
いい加減うんざりしていた。
この二人には全く頭が上がらない。
一人前になって城でも若いながらに殿のすぐお側に控えている俺。
朱里に叩き込まれた忍の特殊な技で俺に勝つものはいなくなった。
努力したんだ。
女みたいな見た目を馬鹿にする輩を見返すために…。
厳しい朱里に痛めつけられながら鍛錬をずっと受けてきたんだ。
だからこそ…
この二人には逆らえない。
「泣き虫の鼻たれがねぇ。変われば変わるもんだよ。」
どこまでも口の悪い朱里。
だけど俺は朱里の言葉に反論したことはない。
朱里の馬鹿にしたような口調にも俺への愛情が見えるから、朱里には本当に感謝しているんだ。