勝利の女神になりたいのッ!番外編
「そりゃそうだろう。
アタシだってまだ半信半疑さ…。だけど目の辺りにしたんだ。信じないわけにはいかなかったんだよ。左近様もアタシもね。」
少し興奮しているのが早口でまくし立てるように話す朱里。
そんな朱里は珍しく、俺はただ事ではないと受け止めるしかなかった。
水口に帰る前、京で殿は小さな小瓶に入った砂糖菓子を買っていた。
使いを出すのではなく殿自らが店に出向いて買った物。
大事そうにその小瓶を懐に直す殿は柔らかく微笑んでおられた。
その砂糖菓子はもしや紫衣という女の為のもの?
「殿はもうおやすみになられたのですか?」
「無理矢理に休んでいただいた。」
「それは?」
「紫衣に逢わせないためだ。」
「逢わすのにどうすればと悩んでいるんだよ。」
二人が俺の前で思案に暮れている。
だけどその娘に自らの手で土産を買ったほどの殿だ。
逢わせないわけにはいかないだろう…。
殿のお気持ちを考えると逢わないと言うのは酷なように思えてならない。
「ですが…。」
「そうなのだ。先延ばしには出来ないということはわかっている。」
俺の言葉を遮って話す左近様。
頭を抱え込むようにしている。
本当に困り果てているようだ。
「ご病気ということにしてはいけないのですか?」
「それも考えた、だが紫衣は今朱里と行動を共にしているのだ。膳を運ぶために城の中を歩き回る。それに、殿の部屋に行かないとも限らないだろう。」