勝利の女神になりたいのッ!番外編
結局おれの心の声は心の中だけに止まり、朱里と左近様に押し切られるようにして役目を言い渡された。
殿と紫衣の接触を極力避けるように図ること。
正澄様と紫衣が逢わないように気をつけること。
殿との接触の件は仕方ないとして正澄様の件は関係ないじゃないかと言えたらいいんだけど二人は満面の笑みを浮かべて俺に託した。
面倒はごめんだ。
そう思っていたのに俺にはいつも面倒なことが持ち込まれてしまう。
ため息深く部屋を出て殿の部屋に向かった。
襖から洩れる灯り。
まだお休みになられていないのか?
「殿、隆吉にございます。」
「入れ。」
声をかけるとすぐに殿の返事が返ってきた。
「失礼します。」
襖を静かに開けて部屋に入ると殿は庭に面した襖を開け放ち空を見上げていた。
「どうした隆吉。」
「いいえ何も...。」
「今日は星が綺麗に瞬いている。」
「はい。」
殿の切なさを含んだ表情。
いつも冷たい表情を人前では崩さない。
でも殿は本当はそんなに冷たい人間ではない。
それを知る人間は殿の側に仕える者達だけだ。
紫衣は知っているのだろうか。
殿の本当の姿を....。
こんな切ない表情をされるということを...。