勝利の女神になりたいのッ!番外編
取り戻した命。
何度も父の口から聞かされた言葉に俺自身違和感を感じていた。
取り戻したんじゃない。
もしかしたらすりかわったのではないだろうか...。
俺は父にも母にも似ていない。
厳格だが温厚であたたかい性格の父。
父を尊敬し心から愛している母。
二人ともとてもあたたかく愛を知る人達。
その二人から生まれ、育てられた俺はどこか冷めていた。
心が冷たく冷えていたんだ。
父と母と一緒にいると自分との違いを見せ付けられるような気がして、俺は次第に両親を避けた。
俺は父とは違う、俺は母とは違う。
俺は愛することを知らない欠陥人間なんだ。
その思いが俺を苦しめた。
そんな時連れてこられたのが佐和山だった。
「父さんは寂しくなるとここに来るんだ。」
城壁もまばらにしか残らない城跡。
寂しいその情景は寂しさを煽るような気がしてならなかった。
「父さんは自分を追い込んで進むタイプなんだね。」
俺の言葉が嫌味だとわかっているのに父さんは何も言わずにニッコリと笑う。
「佐和は、ここの歴史を知っているか?」
「知らねぇ」
歴史なんか興味ない。
人がどんな風に生きてきたって現代は現代だ。
俺たち人間がこれからを作る。
もしかしたら俺たち人間がこれからを壊すかもしれない。
そして壊れてもいいと俺は思っている。