勝利の女神になりたいのッ!番外編




紫衣は戸惑いながらも本来の紫衣を取り戻していた。



「もう大丈夫かな?何かあったら相談にのるからね。」



病院の入り口の前で紫衣の心のケアを担当していた先生が優しく声を掛けている。


紫衣も先生に笑顔で応えていた。



まだ欠落する部分を残す紫衣の記憶。


通常生活に戻るのはまだ心配がつきまとう。


だけど私はおばさんに相談して日常生活に戻しながら紫衣をサポートしていきたいと話したんだ。


電車の乗り方も、生活の全てが曖昧になっている紫衣。


だけど人はちゃんと覚えていた、物の名称も知っている。


中身がポッコリと抜け落ちたような彼女の記憶は生活を元に戻すことで改善されるに違いないと考えたんだ。


担当の先生も私の意見に賛成してくれて、今日晴れて紫衣は退院することになったんだ。



「芽衣ちゃん、ありがとう。」


タクシーに乗り込むおばさんの後ろに立つ紫衣は隣に並ぶ私に笑顔で言ったんだ。


サッパリとした口調、だけどなんだか寂しいと感じた。


紫衣は弱くない、決して弱いわけじゃなかったけど、あまりにアッサリした態度をとる紫衣に不安を感じたんだ。


だから私は触れないと誓ったあの日の記憶に触れてしまった。


決して私からは触れてはいけないと思っていた真衣と石田の事を紫衣に聞いてしまったんだ。







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