勝利の女神になりたいのッ!番外編
次の朝、余り眠れなかったにもかかわらず頭はスッキリとしていた。
俺の帰りを知った兄上から朝餉を一緒にという誘いがあったので挨拶を兼ねて兄上の部屋を訪ねることにした。
「よう戻った。暫くはゆっくりできるのか?」
部屋には兄上だけが座っている。
てっきり兄上の奥方ゆきも同席するものだと思っていたので土産としてゆきのために買ってきた着物の反物を兄上に渡した。
「ゆきは具合でも悪いのですか?」
「そうではない、もうすぐ生まれるのだ。」
嬉しそうな兄上の表情を見て少し羨ましいと感じた。
ゆきと兄上はとても仲のよい夫婦だ。
フラフラとする兄上を叱り付けるゆきはまるで母親のようで、それも兄上を思うが故の行動。
優しい兄上にはシッカリとしたゆきがそばに着いていてくれて安心だ。
ちょっと嫉妬深いところが困りものだけど....。
「ところで三成、話があるのだ。」
「なんでしょう...。」
やっかいな話はごめん被りたい。
だが兄上はニコニコと笑顔を浮かべて話し出した。
以前朝餉を運んできた娘を側室に迎えたいという話だった。
ゆきが身重で子も生まれるというのに...
「ゆきは知っているのですか?」
「そんなこと話せるわけなかろう...。」
嫉妬深いゆきの事だ知れば大事になるに違いない。
「兄上、それは賛成できませぬ。」
「なぜだ?」
それは兄上が一番わかっておられるはずでは?という言葉を口にしようとして飲み込んだ。
襖の外で女の声がしたのだ。