勝利の女神になりたいのッ!番外編
「ゆきが理由でわしの誘いを断るというのか?」
緊迫した空気を更に厳しいものに変える兄上の言葉。
その言葉に娘は体を震わせながらも答えていた。
「いいえ、待っている人がいます。」
「ならばなぜあの時断らなかった。」
「知らなかったのです。」
「なんのことだ?」
「あのやり取りがその...そういうことだとは知らなかったのです。」
二人のやり取りで大体のことは察しがついた、それにしても余りにも無知な娘。
俺は半ば呆れ顔で娘の顔を見た。
同時に心の中で生まれる黒い感情に自分自身驚いていた。
待っている人がいる。
娘の言った言葉が俺に圧し掛かる。
この儚く消えてしまいそうな娘の心の中に住む男とはどんな男なのだ。
引き裂いてやりたい衝動にかられた。
俺にもこんな感情があったのかと自嘲しかけたとき更に部屋の空気が冷たくなった。
兄上が立ち上がったのだ。