勝利の女神になりたいのッ!番外編
「紫衣、これはどういうことか自分でわかって言っているのだな。」
「はい。」
切り捨ててしまわれるのですか?
兄上に言葉を返した後、娘は覚悟を決めたようにその瞼を閉じた。
紫衣.....。
今兄上はこの娘を紫衣と呼んだ?
「お待ち下さい、兄上。」
刀を片手に、その刀を鞘から抜こうとする兄上を制止した。
紫衣...
信じられないが、俺の紫衣なのか?
少女から娘に姿を変えたのか?
混乱する思考の中、ただ紫衣という名前だけが頭の中を支配していた。
「紫衣と....。」
瞼を持ち上げる紫衣。
「名は紫衣というのか?」
尋ねながら兄上が持つ刀を奪い取り紫衣の前に腰を下ろした。
「はい。」
俺を正面から真っ直ぐに見て答える紫衣。
面影が残っているが信じられない。
だが、俺の紫衣だ。
瞳に映る姿は変わっていても心が紫衣だと知っている。
だから俺は紫衣がこの部屋に入ってきた時から心を奪われていたのだろう。