そばにいれたなら
上目づかいで見られると
さっきの帰るという決心がゆらぐ。
だから今度はあたしが視線を
合わさなかった。
「あー…と。今日はなんか調子悪いみたいだから帰るね!」
なるべくいつもどおりに言って
あたしはレイに何か言われる前に
そそくさと玄関に向かった。
今はなにか言われたら決心を簡単に
壊してしまいそうで怖い。
靴を履いてドアノブに手をー――
「待てよ」
かけた瞬間あたしのドアノブを握る手の上に大きな手が重ねられた。
背中には固くて優しい感触。
反射的に俯くとあたしの靴の
すぐ後ろに裸足の足。
レイの左手があたしの前をとおって
右肩を掴む。
後ろから抱きしめられてる……?