モノクローム
距離
それから間もなく春休みになったということもあり
しばらく続いたヒロの待ち伏せもなくなった。
バイトが忙しいせいもあるし
絵里を通して、雅史からも話があったのだろう…。
あたしは、不器用で
気持ちを隠して付き合うことはどうしてもできなかった。
例え、零と上手く行かなくても……
そんな風に突っ走ることができるのも、若さ故かもしれない。
そして、とうとう聖歌隊の練習日
そう、この日はあたしの19歳の誕生日だった。
「…ったくさー、誕生日なのに学校行って、歌歌って?帰りにバイトで?
も〜有り得ないんだよね!」
いつもより遅い朝食を摂りながら、独り言のように毒づいた。
「そんなこと言わないの!選ばれたことを誇りに思いなさいよ?」
母が洗い物をしながら言う。
「じょーだんじゃないっ!大体ね、美声でも何でもないし!」
「ま、一つ理由があるとしたら…声量で選ばれたんじゃない?」
「どーせ、声デカイですぅ〜!」
あたしはわざと大声で言うと
最後のパンの一切れを口に放り込み紅茶で流し込んだ。