龍と虎に愛されて。
「うん。杉崎君もまだ残ってたの?」
「ちょっと用があってね。そういえば、小林君は退学にならないで済んだの?」
杉崎君はあたしから視線を外して、龍心に向けた。
「あぁ」
「そっか……――」
杉崎君はニコリと愛嬌のある笑みを龍心に向ける。
えっ……?
その時、ふとある違和感に気がついて。
「杉崎君……、今何か言った?」
「えっ?何も言ってないけど」
「そ……そうだよね。ごめん、聞き間違い」
苦笑いを浮かべるあたしの横で、龍心は眉間にシワを寄せて険しい表情をしている。
さっき……『そっか』という言葉の後、『残念』と聞こえが気がした。
龍心が退学にならなくて、残念なんて……杉崎君が言うはずないもんね。
すると、龍心はあたしの肩に腕を回して、自分のほうに引き寄せた。
あたかも、杉崎君に見せ付けるように。