龍と虎に愛されて。
「明菜、帰るぞ」
龍心はそう言うと、あたしの肩を掴む手に力を込めた。
そして、そのまま杉崎君の存在を無視して、廊下に向かって歩き出した。
「龍心……?どうしたの?」
龍心は険しい表情を崩すことなく歩き続ける。
「……――小林君!!」
すると、背後で杉崎君が大声で龍心の名前を呼んだ。
「謹慎期間中、佐和さんのことは俺に任せて!!」
杉崎君の叫びは龍心に届いているはず。
それなのに、龍心は唇をぐっとかみ締めたまま、振り向こうはとしない。
杉崎君は……どうしてあんなことを叫んだんだろう。
杉崎君とはほとんど関わり合いなんてなかったのに。
この間、廊下で声を掛けられたときも、不思議だった。