龍と虎に愛されて。
あの時は、照れくささと嬉しさで龍心が何を考えていたのか分からなかった。
でも、よくよく考えたら何かがおかしい。
龍心は何で突然あんな行動に出たんだろう。
いつだって強引な龍心だけど、今日はいつもと違う気がした。
何かを焦っているような……そんな感じ。
それに、杉崎君とのいざこざの後にあんなことをするなんて。
龍心に何かあったのかな……?
杉崎君と……揉めたとか……?
ううん、そんなはずないよね。
だって、龍心が杉崎君と喋ってるところなんて、一度も見たことがないもん。
だけど、やっぱり心配になる。
「明菜、着いたよ?」
「あ……うん!」
瑞穂の言葉に慌てて窓の外に視線を移す。
そこには、たくさんの木々に周りを囲まれた小さくて古臭い旅館が飛び込んできた。