龍と虎に愛されて。
「……ごめん。遅刻しちゃうから……」
何を言われても、立ち止まったりしちゃダメ。
もしまた龍心に誤解されるようなことになったら、取り返しのつかないことになる。
「ちょっと待って!頼むから!」
だけど、杉崎君は鬼気迫った様子であたしを呼び止める。
そのまま無視して歩き続けるか。
それとも立ち止まって話を聞くか。
二つの間で揺れ動く心。
すると、あたしの様子に痺れを切らしたのか、何かを胸に抱えた杉崎君があたしの元に駆け寄ってきた。
「こいつ……ここに捨てられてたんだけど元気がないんだよ」
「え……?」
杉崎君は胸の中に抱えた子猫をあたしに見せた。
「鳴き声も元気ないし……、腹減ってんのかな?俺、動物のこと詳しくないし、分かんなくて」
「あたしも詳しくないよ……。どうしよう……」
確かに杉崎君の言うとおり、胸の中にいる子猫は目をつぶって弱っているように見える。