龍と虎に愛されて。
「大丈夫です。俺が飼うから」
「……そうですか。では、待合室でお待ちください」
杉崎君の真剣な表情を見て獣医は小さく頷いた。
「……杉崎君、本当に飼えるの?」
診察室を出て待合室の長椅子に座りながらそう問い掛けると、杉崎君は頷いた。
「飼えないなんて言えるわけないって。俺が飼わなきゃあいつ保健所で殺されるんだ……」
「……うん」
『あたしが引き取ろうか?』
喉まで出かかった台詞をぐっと飲み込む。
もしパパとママが反対したら……。
小さくたって一つの大切な命に変わりない。
この場で簡単に決断は出せない。
あたしは自分のふがいなさに、ギュッと唇を噛みしめた。