龍と虎に愛されて。

「女の子を……好きになったことがないってこと?」


「多分ない。だってさ、愛されたことのない人間が人を愛せるわけないじゃん?」


杉崎君の心の傷を知り、心の中にモヤモヤが広がっていく。


「でもさ、明菜ちゃんだけは特別だったんだ」


「特別……?」


「そう。どうしても手に入れたいって思った。こんな気持ち初めてだったんだ」


「……」


あたしはなんて答えたらいいんだろう。


なんていう言葉をかけてあげればいんだろう。


無言で俯いていると、杉崎君はわずかな沈黙を破った。
< 273 / 478 >

この作品をシェア

pagetop