龍と虎に愛されて。
「……肝試しの日はごめん。あれはやり過ぎた」
「もう……いいよ」
あの日、杉崎君の取った行動は絶対に許せない。
未だに思い出すと胸が締め付けられるように痛くなる。
でも、杉崎君の心の傷を知り、あの行動の意味を少し理解できたような気がする。
『愛されたことのない人間が、愛せるわけないじゃん?』
杉崎君は人をどうやって愛したらいいのか分からないんだ。
杉崎君がたまに見せる表情。
顔は笑っているのに、目が笑っていない。
能面のように冷めた顔。
杉崎君は……、みんなに見せる表の顔とは違う裏の顔を持っていた。
『天然美少年』
みんなは杉崎君のことをそう呼ぶ。
だけど、杉崎君はみんなが知らない複雑な事情を抱えていて。
胸に熱いものがこみ上げて来て、あたしは杉崎君の目をまともに見ることができなかった。