龍と虎に愛されて。
≪トントントン……――≫
すると、誰かが一定のリズムを刻んで階段を上がってきた。
それを瞬時に察し、俺は急いで落ちていたヅラを被り、伊達メガネをかけた。
そして、その後すぐにコンコンというノック音と同時に佐和の母親がひょこっと顔を出した。
「小林君、少し休憩しない?よかったら、夕飯一緒にどうかしら?」
「いえ、でもそれは申し訳ないので……」
いつもの根暗男になりきってそう答えると、佐和は俺のことをア然とした表情で見つめていた。