龍と虎に愛されて。

「実は昨日の日直の仕事で少しやり忘れたことがあって。一緒に手伝ってもらえませんか?」


「それって、一人で出来ないの?」


っていうか、昨日の日直でやり忘れたことなんてないよね?


それに、やり忘れたって今日の日直がやってくれるだろうし……。


っていうことは、あたしを誘い出すための口実!?



「一人では……無理なんです」


「ねぇ、明菜。少しくらい手伝ってあげなよ?小林君可愛そうだよ……」


しおらしく俯き、同情を買おうとする小林にまんまと騙された瑞穂。


何も知らない瑞穂を味方にした小林は口の端をクッと上に持ち上げた。


「……分かった。分かったわよ!」


「ありがとうございます」


もうどうにでもなれ!!


そんな気持ちで叫ぶと、小林はゆっくりとした動作で椅子から立ち上がった。


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