龍と虎に愛されて。
『これ、立て替えといてくんない?』とか『悪い、金貸して?』とか。
女に『マサ君』と呼ばれているこの男は、悪びれる様子もなく女に金をせびる。
初めは気にもとめなかった些細なこと。
でも、会計時に女が見せる寂しそうな目がいつも気になっていた。
「あのっ……、これください」
「……――あぁ、いらっしゃいませ」
いつの間にか目の前に立っていた女は、恐る恐るカゴを俺の前に差し出す。
なんだ……?
何故かソワソワして、俺と目をあわせようとしない女に首を傾げる。
「あの、どうかした?」
「えっ……?いえ、なんでもありません!!すみません!!」
「いや、謝んないでよ」
どうして、客が店員に謝るんだよ。
苦笑いを浮かべながらカゴの中の雑誌を手に取った俺は、思わず目を丸くした。