龍と虎に愛されて。
「……――優華!!いくぞ!!」
「ま、マサ君……――、痛いよっ……!!」
腕をグイグイと引っ張られて、痛みに顔を歪める優華ちゃん。
今の俺には、男の手を振り払うことも優華ちゃんを奪うこともできない。
できることといえば、唇を噛み締めてジッと耐えることだけだ。
「……――?」
その時、優華ちゃんが顔をこちらに向けた。
そして、口を開いて何かを言うとペコリと頭を下げた。
『あ、り、が、と、う』
そう言っていたのか……?
そんなことを考えている間に、優華ちゃんは男に引っ張られて、どんどん俺から離れていく。
ああ……、そっか。
ようやく気付いたよ。
このモヤモヤした気持ちの正体に……――。
俺は自分でも気付かないうちに、あの子に恋をしたのかもしれない。
あの子を好きになっていたんだ……――。