龍と虎に愛されて。
あの子の過去
翌日。
学校に着くなり、俺は真っ先に明菜ちゃんの席にやってきた。
明菜ちゃんは不思議そうな表情を浮かべながらも、優華ちゃんのことを教えてくれた。
「優華ちゃんって、お父さんがいないんだ。今はお母さんと二人暮らしだって聞いたよ」
「へぇ……。俺と同じ母子家庭か」
「うん。優華ちゃんのお父さんは、優華ちゃんが赤ちゃんのときに病気で亡くなったみたい。そのせいかは分からないけど、優華ちゃんって昔から男の子が苦手なの」
「男が苦手?」
「そう。男の子としゃべるのも、目を合わせるのも苦手みたい」
「それなら、どうしてあんな奴と付き合ってるんだろう」
「うん……あたしも不思議に思ってた」
昨日、俺と目を合わせようとしなかったのは、男が苦手だからか……。
嫌われたわけではないと知り、ほんの少しホッとしている自分がいる。